NAZA GPS 「コンパス」 モジュールの調整
2013/06/03追記、Naza Ver3.12からはGPSの示す北とコンパスモジュールの示す北をNAZA自体が学習して飛んでる間に修正する機能がついたので、ここに書いてある調整は、そんなにシビアにやらなくてもよくなりました。
こちらのblogを訪ねた方は、yahoo検索で、"NAZA GPS 設定"なんて言うキーワードでいらっしゃる場合が多いみたいです。
所詮GPSはGPSですから、位置情報はmmはおろか、m単位での誤差を含んでおり、説明書によれば、GPS.Attitudeモードのホバリングでは、水平方向+-2.5m、垂直方向0.8mは動くよ。とのこと。でもそれ以上ふわふわあっちにいったりこっちにいったりの機体があるとすれば、調整すれば良くなる可能性があります。
ということで、「K&S マルチコプター用GPSアンテナホルダー」を付けて調整してみました。なかなかあっちにいったりこっちにいったりで微妙な力加減が難しく、すぐに出来た~という訳にはいきませんでした。まだ調整中ですが、最終的に残る、NAZAのGPSアンテナの角度調整の為にはしょうがないのかなあ。
次(があるのかも不明)のファームアップがあるとすればGPSの角度入力はPCで出来るようにしていただくと有難いですね。
Multiwiiだと、config.h内の#define MAG_DECLINIATIONの数字を変える方法でPC上で調整可能。機械的なのがいいのか、PC上で設定出来るのがいいのか。。。。
まあ、両方出来るに越したことはないと思います。
以下、いつものように、無責任な思いつきなので、話半分に聞いていただいて、まあ自分で納得出来る所があれば、試してみていただければ幸いです。だらだらと長い文章ですみません。。。
1.まずはAttitudeモードの確認事項
NAZAのAttiudeモードというのは、スティックを打っていない時に機体を水平に保つのが仕事ですから、プロポのスティックをニュートラルにしておけば風のない日にはぴたっと止まる筈です。
もし風がないのに前後左右に動いてしまうなら、
1.NAZA本体が、傾いて本体についていないか。
2.(例えばカメラ屋さんでこんなのを入手し)ちゃんとフレームが水平なのを確認して、その上でIMUのキャリブレーションをする。
(水平がいい加減な状態でキャリブレーションすると、当然トリムがずれます。)
3.PC立ち上げたついでに、スティックのニュートラルが出ているかも確認する。
Attitudeモードで風が吹くと、風の方向に機体が流れるのが正しい調整になります。
あと、NAZA本体が機体の進行方向にまっすぐ取り付けられていないと(斜めに取り付けられていると)、エレベーターを操作すると、エルロンが混じったり、逆にエルロンを切ると前後方向に機体が動いたりします。これは、その後の調整の妨げになるので、NAZAの固定し直しが必要です。
しかし、Attitudeモードが完璧であったとしても、GPSAttitudeモードにすると、一見トリムがずれまくったように見える状態になるのはよくある話で、GPS"コンパス"ユニットが理想の角度に取りついていないのが原因の一つ目、GPS"コンパス"ユニットが機体の電子部品(ワイヤー含む)に近すぎて磁気の影響を補正出来ないくらい受けているのが原因の二つ目、NAZAの設定画面でGPS"コンパスモジュールの搭載位置が正しく入力されていないのが三つ目の原因だと思われます。
1.Attitudeモードではトリムなしでピタっと止まるのに、GPSAttitudeモードでは、くるくる円を描いてホバリングしている。人によって(機体によって)円の直径が小さければ、ゆっくり回っている感じだが、円の大きさが大きいと、トリムが合っていないように感じる。
2.Go Homeで、現在地点から離陸地点への移動の時、真っすぐ帰ってこないで、弓のように膨らんだ軌道で、ちょっと行き過ぎてからもどってくる。ひどい場合には渦を描いているように見える。
3.GPSAttitudeモードでエレベーターアップダウンのみ操作した時、左右にも動き、結果として斜めに移動する。
多かれ少なかれこれらの症状は出るものですが、ひどい場合はGPS"コンパス"モジュールの調整をした方がいいと思われます。
2.GPS "コンパス"モジュールの働きについて
まずはじめに、誤解を恐れずに、単純にして、NAZAがどうやってGPSの情報を位置の補正に使っているか想像してみます。あくまで想像です。(>_<)
NAZAのGPSと呼ばれている部分には、GPSセンサーの他に、磁気センサーが付いています。
GPSセンサーは今、機体が地球上のどこにいるか、情報を取得します。
NAZA本体は、例えば、GPSが計測した現在の位置と、前回の測定位置を比べて、前回からどの方向にどれだけ動いたかの情報を得ることが出来ます。
スイッチが入り、離陸前のGPSが現在位置を捉え始めた時の位置を記憶しておけば、飛行中いつでも、現在のGPSの位置と比較することにより、自分が帰る位置はここから南に何mで西に何mか、という感じに、計算することが出来ます。
スティックがニュートラルなのに、風が吹いて流されたせいで前回より真北に1m流された。とNAZAが感じたら、NAZAは機体を南に1m移動させようとします。そしてそこでNAZAは考えるのです。機体を南に動かすには、エレベーターアップ・ダウン?エルロンは右?それとも左?
もしも機体が真北を向いていれば、南に移動させるにはエレベーターアップの方向にモーターを制御すればバックして南に機体は動きます。真南を向いていれば前進方向で南。西を向いてればエルロンを左に切る方向。東なら右に移動すれば、南に機体を移動させることが出来ます。
そこで登場するのが「コンパス」
この磁気センサーのお陰で、NAZAは今自分が東西南北どちらを向いているかを知ることが出来ます。
南に移動したければ、今コンパスによると、機体は西の方を向いているから、エルロン左の方向。。。とか、、、
万が一、GPSの向きを前後180度反対につけてしまったら、えらいことになります。GPSが計測する位置はコンパスの異常に関係なく正常に取得できます。その結果、「北に1mずれてるから、南に1m移動。」とNAZAが決めたとして、コンパスの方向は南北逆になってますから、結果としてさらに北に1m移動することになってしまいます。そのまま放っておくと、機体は空の彼方に消えていってしまうでしょう。(たとえ話)
180度逆は経験ありませんが、60度は経験があります。以前、バッテリーを固定しようとしたら、固定用のマジックテープを通し忘れて、慌ててF550のアッパーフレームを外し、マジックテープを通したあと、付けなおした時に60度ずらしてアッパーフレームをネジ止めしたことがありました。(危険なのでマネしないで下さい。)上空から帰ろうと、ホバリングの状態でGPSAttitudeモードにした瞬間、機体はいつもと違う動き。びっくりしました。(GPS切って帰還。)
3.GPSの方角とコンパスの方角
NAZAの説明書に載っているGPSとコンパスの方位ずれを解消するための方法、3つのうちの2つ、、、
1.機体の進行方法にGPS"コンパス"モジュールの△印を向ける。
2.コンパスのキャリブレーションを実行する。
だけでは必ずGPSの東西南北とコンパスの東西南北は必然的にずれます。
コンパスずれ原因その1 偏差
小学生が理科の実験で使う方位磁針も、NAZAの磁気コンパスも、地磁気(地球内部で発生している磁力)を感知して方角を割り出すと、正確には北極を指しません。これは、磁石上の北極(磁北)が本当の北極よりずれた所にあるからです。
そしてこの角度のずれの大きさは世界中、場所によって大きさ、向きがかわります。日本国内では、北海道先端で10度弱、沖縄だと4度ほど、NAZAのコンパスは真北より西側を北と認識します。この角度のずれのことを偏差といったり、偏角といったり、英語ではmagnetic declinationと言うようです。
参考その1:国土地理院地磁気測量
参考その2:磁気図(偏角)2010年値
参考その3:magnetic-declination.com
参考その1、参考その3で、地図から自分のフライト場所を指定すれば、偏差(偏角)がわかります。参考その3は世界中の偏角が求められるので海外でフライトされる場合には必須です。(>_<)
参考その2を見ると、この偏差というものは、地理的な緯度、経度から単純に計算で求められるものでもなさそうで、ぱっと見た目、気持ちのいい温泉が湧いていそうな火山がありそうな所とかで傾向が異なったりするようです。
世界に目を向けると、カナダのバンクーバーあたりでは、偏角は東に17度ですから、万が一、DJI F550 NAZA-M GPS付き飛行調整済フルセットをバンクーバーのお店から直輸入したら、いくらバンクーバーで真っすぐ飛んだとしても、日本じゃ北海道では27(17+10)度、沖縄でも21(17+4)度もコンパスがずれることになりますから、たぶんGPSAttiモードの調子は調整済には程遠い感じになると思われます。
なお、万が一本当にカナダのバンクーバーから機体調整済フルキットを輸入しようと画策される場合には、飛行前に国内で普通に販売されている物に取り替えて下さい。そうしないと、かなりの確率で法律違反になって、総務省に怒られますから。。。(>_<)
繰り返しになりますが、NAZAのコンパスキャリブレーションは、これらの偏差(偏角)を補正する機能ではありません。キャリブレーションが理想的に行われれば、NAZAのコンパスは正確にその場所の磁気上の北極(磁北)を向きます。そして磁北と真北(北極点への方向)のずれの角度、偏差(偏角)は地球上の色々な場所で異なり、時間の経過でもゆっくりと変わっていくようです。
コンパスずれの原因その2 自差
次は自差の問題。これは、自分の機体に積んでいるESC、モーターや電線(電気が流れれば必ず磁力が発生する。)、電気が流れなくても、磁性体が存在する(鉄やフェライトコア(たまにESCやサーボのリード線を延長する時に付いてくる丸い輪))など、機体の中にはコンパスの精度を落とそうとするものが沢山あります。
これらの影響を排除する為に我々はコンパスキャリブレーションを行う訳です。
なので、キャリブレーションを行う時は、飛行時に電源を入れるもの、例えばカメラ、ビデオトランスミッター等、すべて電源を入れて行う必要があります。
今回はトランスミッター外して飛ぼうとか、カメラ変えてみようなんて場合は、再度キャリブレーションが必要なはずで、私は飛行前には儀式だと思って、プロポのスイッチをパチパチ動かしてキャリブレーションすることにしています。まあ、急いでいる時なんか、たまにやらないこともありますが、、、(>_<)
あまりにコンパスを惑わす磁気が多いと、キャリブレーションエラーになりますし、キャリブレーションする前提でも、コンパスのことだけを考えたらコンパスは出来るだけ機体の発する磁気の影響を受けない遠い所に設置するのがいいです。
磁気を発する物体からの磁力は、大雑把(かなり大雑把)にいうと距離に反比例して少なくなっていきます。
なので、ある程度離して距離をとったら、影響はほぼゼロにすることが出来、それ以上離してもなんの効果もありません。
距離を離すと地磁気も弱くなってしまうのでは、と私も一瞬心配しましたが、先ほど述べた通り、磁気の強さは距離に反比例する(繰り返しますがかなり大雑把)ので、地球内部うん千km離れた所からの地磁気がうん千km+15cm離れたところで大差ないです。でも、機体1cmの所から発する磁力に対しては、15cm離せば絶大な効果が、たぶんあります。
GPSが捕捉出来たらよしとするだけでなく、物言わぬコンパスのことも考えて搭載位置を決めてよ。。。というお話でした。
ずれの原因その3 その他のずれ
まあ、その他にも、GPSコンパスモジュールを製造する時の品質のバラつきや、丁度飛行させる時に太陽の活動による磁気嵐が起こったり、とか、飛ばしてる場所の近くに送電線があるとか、実は飛行させる場所の下にはオーストラリア人もびっくりするような磁鉄鉱の鉱脈があったとか、あるかも知れませんが、まあ、あまり気にしてもしょうがないような気もします。
4.GPSの搭載位置の設定
NAZAの設定画面で出てくる、xyzの距離を1cm単位で入力する奴です。
GPSセンサーが計測できるのは、あくまでGPSセンサーが存在する位置の緯度、経度ですから、NAZAが設置されている場所の位置情報ではありません。
機体を手に取り、GPSコンパスモジュールを基点に、エレベーター、エルロン、ラダーの方向に回転させてみれば分かる通り、GPSの位置が決まっても、NAZAの位置が決まる訳ではありません。GPSの位置から、NAZAの位置を割り出すには、
1.GPSとNAZAの間のx軸y軸z軸の距離
2.その時の機体の傾き(エルロン・エレベーター・ラダー方向)
の二つが 必要です。2の傾きについては、その時その時の機体の傾きをNAZAが自分のIMUで取得しますが、1の距離については、手動で入力する必要があります。
NAZAを使用する上で、悩むところの一つは、これらの距離はGPSから機体重心の距離を入力するのか、それともNAZAまでの距離なのか。ということです。
NAZAの説明書には、「NAZAは機体の重心に限りなく近い所に設置しろ。」と書いてありますが、なかなかそうもいかない。
フレーム中心にNAZAを設置すれば、x,yについてはほぼ機体の重心に合わせることが出来ますが、z軸については、機体の下にジンバルやらカメラをぶら下げるとNAZAの設置場所と重心が合わなくなっている機体が多いのでは?と思います。
NAZAの説明書どおりにやるとすれば、
1.NAZAは機体の重心に設置
2.GPSの設置場所は重心位置への距離(=NAZAの位置への距離)を入力
なのですが、NAZAと重心の位置がz軸でずれていたらどうするか???
一応私は、NAZAまでの位置を入力していますけど、どうなんでしょう。
5.GPS "コンパス"モジュール調整
コンパスとGPSの角度を揃える
ここまでに、トリムなしでAttiudeモードで安定して飛行出来た。GPSの搭載位置もある程度機体から離して、正しい数値を入力した。GPSの△マークは機体の前進方向を向いている。コンパスキャリブレーションもやった。ということになると、最後に残るのは、磁気偏差(偏角)の分だけ、GPSを回転させてやるという調整になります。
がしかし、両面テープで固定してある、GPSコンパスモジュール。どうやって回転させるんだ?という所が問題でして、試してみれば分かりますが、飛ばしては調整みたいなことは、両面テープではほぼ不可。日がくれても終わらず、1度単位でGPSを貼り替える調整なんて、よっぽどの両面上手でないと無理ですね。(終)